“ばたばた”の時代に、時間を価値へと変える視点
「最近ちょっと、”ばたばた”していまして…」
──そんなセリフ、よく耳にしますね。
あいさつ代わりのように交わされるこの言葉。
けれど、聞くたびにふと思ってしまうのです。
ばたばたって……水鳥でもあるまいし。
笑って済ませたいところですが、案外、笑えないのも事実。
セイコーの『時間白書2025』によれば、
「ばたばた」は3年連続で“いまの暮らし”を表す言葉の第1位。
セイコー時間白書2025 | サステナビリティ | セイコーグループ
もはや癖というより、私たちの染みついた習慣になっているのかもしれません。
私たちはいま、「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する時代を生きています。
いかに短く、いかに効率よく。
動画は倍速、会議は巻きで、ランチは流し込み。
しかも最近では、「ながらストレッチで時短入浴」なんて言葉まで登場しています。
いったい何と競争しているのやら。
でも、ふと立ち止まって思うことがあります。
効率よく過ごしてるはずなのに、どうしてこんなに余裕がないんだろう?
そんな問いに、静かに、でも力強く応えてくれたのが、セイコーの「時の記念日」広告でした。
新聞の見開き30段という圧巻の紙面。
そこに、大谷翔平選手が……驚くほど小さく写っていたのです。
豆粒のようなサイズでバットを構え、ページ中央にぽつんと立つ姿。
SNSでは「過去最小の大谷翔平」と静かに話題になっていました。
でも実は、その“余白”こそが主役でした。
「今を懸命に生きることで、その余白が豊かなもので満たされていく」
未来を焦って追うよりも、目の前の一歩に集中すること。
“今”の積み重ねこそが、意味ある未来を育んでいく──
そんな哲学が、あの一枚に込められていました。
🕰 セイコー時間白書2025|“いまの暮らし”に見えてきた4つの傾向
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「効率よく」は正義に。でも、そこに“自分らしさ”はあるだろうか?
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SNSで他人の時間が可視化され、自分のリズムを保つのが難しくなった。
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没頭や“ぼうっとする時間”は、むしろ心の再起動スイッチ。
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忙しさの奥にあるのは、「本当の時間を生きたい」という切実な欲求。
2025年現在の時間感覚(定点観測)
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64.0%が「時間に追われ」、56.9%が「1日24時間では足りない」と回答。
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「ばたばた」が3年連続で1位──国民的コンディション。
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1時間の“自己評価額”:仕事中 4,780円、プライベート 12,727円。
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感情の上位は「イライラ」と「ぼうっと」。心も時間も落ち着かない日常。
いまや時間は、“長さ”で測るものから、“意味”で感じるものへと変わりつつあるようです。
こうしたデータに浮かぶのは、「とにかく進んでるけど、どこに向かってるか分からない」という現代の気配。
経営もまた、同じ課題を抱えているのではないでしょうか。
スピードや効率ばかりが注目される今こそ、
“この道でいいのか”と立ち止まることの価値を見直す時かもしれません。
立ち止まり、振り返る──それが未来をつくる“源泉”です。
今を丁寧に生きること。
それは成果や成長とは別の角度から、組織にも人にも、確かな力を与えてくれるはずです。
──さて、このコラムにかけた数十分。
もしあなたの心に、ほんの少しでも“いい余白”が生まれていたなら、
今日の私はとても効率よく、満たされた気がします。
あっ、やっぱり…、タイパですか?!(笑)