先月、日常の喧騒を離れ、歴史と文化が息づく播州赤穂と淡路島へ、心を解放する旅に出ました。潮風に誘われ、時を巡る旅の記録です。
播州赤穂 – 忠義の魂に触れる
JR赤穂線の播州赤穂駅に降り立つと、そこはまさに忠臣蔵の世界。街全体が、大石内蔵助をはじめとする四十七士の忠義の物語で満ち溢れています。
息継ぎ井戸
最初に訪れた「息継ぎ井戸」では、江戸城松の廊下での刃傷事件を知らせる使者、早水藤左衛門と萱野三平は三月十四日に江戸を発ち苦難に耐えて十九日未明に赤穂に到着しています。この井戸で水を飲み、息を継いで大石内蔵助の屋敷へ急いだと伝わります。当時の家臣たちの心情を想像すると、胸が熱くなりました。
大石神社
次に足を運んだ「大石神社」では、東郷平八郎元帥の揮毫による石碑が、武士道の精神を今に伝えています。鹿児島出身の私にとって、思いがけず同郷の東郷元帥に出会うとは!衝撃の石碑でした。
赤穂城跡を散策すれば、歴史の舞台に立ったかのような錯覚を覚えるでしょう。赤穂の街は、ただの観光地ではありません。そこには、時代を超えて人々の心を打つ、忠義の魂が息づいているのです。
淡路島 – 神話と芸能の島で心を遊ばせる
今回の旅で淡路島を訪れたのは、以前から気になっていた寅さんの口上がきっかけでした。
男はつらいよ
映画「男はつらいよ」の寅さんの啖呵売口上の中で、「国の始まりが淡路島なら、泥棒の始まりが石川の五衛門…」という言葉があります。なぜ寅さんは淡路島のことを口にしたのだろうか。日本の始まりとはどういうことなのだろうか。そんな疑問が湧き、実際に淡路島を訪れて、この目で確かめてみたいと思ったのです。
明石海峡大橋を渡り、淡路島へと向かいました。古事記の国生み神話に彩られたこの島は、日本の始まりの地とも言われています。時はおりしも建国記念日、2月11日。まさにタイムリーな訪問でした。
くにうみ(国生み)神話
イザナギ、イザナミの二柱の神様が最初に作った島が、淡路島であるという神話は、日本人の心の原風景です。
まず訪れたのは、「伊弉諾神宮」。ここは、国生み神話の舞台となった神聖な場所です。樹齢900年を超える夫婦大楠は、訪れる人にパワーを与えてくれます。
淡路人形座
淡路島には江戸時代から昭和の初めまで大小あわせて40あまりの人形座がありました。
その内の一つ、吉田傅次郎座の道具類を淡路人形座が継承し、公演をしています。
500年以上の歴史を持つ淡路人形浄瑠璃は時代と共に古いものを残しつつ、新しいものを加えながら、その本質は変わることなく継承されています。
力強い義太夫の語り、腹の底に響く三味線の音色、豪快さの中に繊細さが光る人形の動き、が織りなす世界は、まさに圧巻でした。人形たちが生きているかのように感情を表現する姿に、心を奪われました。
淡路島は、神話、歴史、そして伝統芸能が息づく、まさに日本の縮図のような場所です。
今回の旅は、日本の歴史と文化の奥深さを再発見する旅となりました。
播州赤穂で武士道の精神に触れ、淡路島で神話と芸能の世界に浸り、私の心に深く刻まれました。皆様もぜひ、この魅力あふれる二つの場所を訪れてみてください。