昼の洋食屋に、経営の縮図あり
昼の洋食屋で、オムライスの皿にはパセリ。
とんかつ定食にはキャベツの山と、レモンが一切れ。
何気ないこの光景を眺めながら、私は思いました。
「ここには人間関係と経営の縮図がある」と。
キャベツは喜ばれ、レモンは議論を呼び、パセリは残される。
しかし、この三者こそが、実は組織とビジネスの“味”を決めているのです。
そのことに気づいた瞬間、私は確信しました。
「食卓には、経営の三原則がある。」
キャベツの原則:共感と安心を満たす
キャベツは“安心の象徴”です。
どんな料理にも添えられ、たっぷり盛られ、ドレッシングをかければみんな笑顔。
量が多く、やさしく、馴染みのある存在です。
これはマーケティングでいえば、「共感」と「量の安心戦略」。
人は未知よりも、慣れたものを好みます。キャベツ的な企業は、広く穏やかに愛されやすいのです。
ただし注意点があります。
キャベツ型経営は“刺激”を欠くと、やがて飽きられてしまいます。
やさしさだけでは、心は動きません。
つまり、量は信頼を生みますが、熱は生まないのです。
レモンの原則:決断で流れを整える
一方、レモン。
この一滴で、とんかつはさっぱりもすれば、台なしにもなります。
「かける派」と「かけない派」という宗教戦争を引き起こすほど、好みが分かれます。
しかしそれは、レモンが“意思決定”の象徴だからです。
酸味にはセンスが問われます。
どのタイミングで、どれだけ絞るか。
──これは、経営判断そのものです。
決断とは、万人に好かれることではなく、
適切なタイミングで最小限の刺激を与えること。
つまりレモン型リーダーは、「一滴の勇気」で流れを変える人なのです。
パセリの原則:美学と付加価値で仕上げる
そして、パセリ。
多機能でありながら、いつも残されがちです。
しかし実は、彼こそが最も優れた存在です。
- ビタミンCはレモンの3倍。
- 鉄分・カルシウム・クロロフィルが健康と会話を支えます。
- 補色効果で皿全体を引き締め、
- 苦味で味覚をリセットします。
- 栄養・デザイン・心理・美学、すべてを担う万能葉です。
それでも残されてしまうのは、多彩な付加価値が伝わっていない──マーケティングの不備なのです。
パセリは良い商品、ただしPRが下手。
つまり、品質と伝達の間に橋がかかっていません。
企業に置き換えるなら、
「理念も技術も素晴らしいのに、発信が弱い会社」。
「誠実な社員なのに、地味で埋もれる人」。
どんなに良い価値でも、“伝わらなければ存在していないのと同じ”です。
パセリの沈黙は、ブランディングの盲点を教えてくれます。
三原則がそろって、経営は整う
キャベツの「共感力」、
レモンの「決断力」、
パセリの「美学と調整力」。
この三つの原則がそろってこそ、企業も人も“味わい深く”なります。
キャベツだけではぬるく、
レモンだけでは尖り、
パセリだけでは敬遠されちです。
しかし三者が響き合うとき、組織には深みと余白が生まれます。
それこそが、経営の成熟という“おいしさ”なのです。
【余話】─パセリのブランディング戦略
最後に、パセリから学べるブランディングのヒントを挙げます。
1.位置を変える──ポジショニングの再定義
皿のすみから、主菜のそばへ。存在意義を可視化しましょう。
2.物語を語る──ストーリーの力
「古代ローマでは口直しの葉」といった背景を添えるだけで、価値は変わります。
3.呼称を変える──ネーミングは武器
“パセリ”ではなく、“リセットリーフ”と呼んでみる。印象が変わります。
4.自ら発信する──沈黙はもはや美徳ではない
良いものほど、「私はここにいる」と伝える勇気が必要です。
パセリは悪くありません。
ただ、広報がいないだけなのです。
小さな一葉にも、伝える力と整える知恵があります。
パセリが教えてくれるのは、価値をつくることより、価値を伝えることの大切さです。





