2025.10.25

昼の洋食屋に、経営の縮図あり

昼の洋食屋で、オムライスの皿にはパセリ。

とんかつ定食にはキャベツの山と、レモンが一切れ。

 

 

何気ないこの光景を眺めながら、私は思いました。
「ここには人間関係と経営の縮図がある」と。

キャベツは喜ばれ、レモンは議論を呼び、パセリは残される。

しかし、この三者こそが、実は組織とビジネスの“味”を決めているのです。

そのことに気づいた瞬間、私は確信しました。

 

「食卓には、経営の三原則がある。」

 

キャベツの原則:共感と安心を満たす

 

キャベツは“安心の象徴”です。

どんな料理にも添えられ、たっぷり盛られ、ドレッシングをかければみんな笑顔。

量が多く、やさしく、馴染みのある存在です。

 

これはマーケティングでいえば、「共感」と「量の安心戦略」。

人は未知よりも、慣れたものを好みます。キャベツ的な企業は、広く穏やかに愛されやすいのです。

ただし注意点があります。

キャベツ型経営は“刺激”を欠くと、やがて飽きられてしまいます。

やさしさだけでは、心は動きません。

つまり、量は信頼を生みますが、熱は生まないのです。

 

レモンの原則:決断で流れを整える

 

一方、レモン。
この一滴で、とんかつはさっぱりもすれば、台なしにもなります。

「かける派」と「かけない派」という宗教戦争を引き起こすほど、好みが分かれます。

しかしそれは、レモンが“意思決定”の象徴だからです。

 

酸味にはセンスが問われます。

どのタイミングで、どれだけ絞るか。
──これは、経営判断そのものです。

 

決断とは、万人に好かれることではなく、
適切なタイミングで最小限の刺激を与えること。

つまりレモン型リーダーは、「一滴の勇気」で流れを変える人なのです。

 

パセリの原則:美学と付加価値で仕上げる

そして、パセリ。

多機能でありながら、いつも残されがちです。

しかし実は、彼こそが最も優れた存在です。

 

 

 

  • ビタミンCはレモンの3倍。
  • 鉄分・カルシウム・クロロフィルが健康と会話を支えます。
  • 補色効果で皿全体を引き締め、
  • 苦味で味覚をリセットします。
  • 栄養・デザイン・心理・美学、すべてを担う万能葉です。

それでも残されてしまうのは、多彩な付加価値が伝わっていない──マーケティングの不備なのです。

パセリは良い商品、ただしPRが下手。

つまり、品質と伝達の間に橋がかかっていません。

 

企業に置き換えるなら、

「理念も技術も素晴らしいのに、発信が弱い会社」。
「誠実な社員なのに、地味で埋もれる人」。

どんなに良い価値でも、“伝わらなければ存在していないのと同じ”です。

 

パセリの沈黙は、ブランディングの盲点を教えてくれます。

 

三原則がそろって、経営は整う

キャベツの「共感力」、
レモンの「決断力」
パセリの「美学と調整力」。

この三つの原則がそろってこそ、企業も人も“味わい深く”なります。

 

キャベツだけではぬるく、
レモンだけでは尖り、
パセリだけでは敬遠されちです。

しかし三者が響き合うとき、組織には深みと余白が生まれます。

それこそが、経営の成熟という“おいしさ”なのです。

 

【余話】─パセリのブランディング戦略

 

最後に、パセリから学べるブランディングのヒントを挙げます。

1.位置を変える──ポジショニングの再定義
皿のすみから、主菜のそばへ。存在意義を可視化しましょう。

2.物語を語る──ストーリーの力
「古代ローマでは口直しの葉」といった背景を添えるだけで、価値は変わります。

3.呼称を変える──ネーミングは武器
“パセリ”ではなく、“リセットリーフ”と呼んでみる。印象が変わります。

4.自ら発信する──沈黙はもはや美徳ではない
良いものほど、「私はここにいる」と伝える勇気が必要です。

 

パセリは悪くありません。

ただ、広報がいないだけなのです。

 

小さな一葉にも、伝える力と整える知恵があります。

パセリが教えてくれるのは、価値をつくることより、価値を伝えることの大切さです。