2019.04.08

関連するキーワード

ご挨拶

みなさん、こんにちは。
本日から、「ビジネスに効く、二木の経営コラム『千両みかん』」をスタートします。

 

このコラムは、主に中小企業経営者向けに、お役立つ情報をお届けしたいと思います。

とはいってもの出来るだけ肩肘張らず、リラックスした雰囲気で進めていきたいと思います

のでよろしくお願いします。

 

さて、記念すべき第1回は、このタイトルにもなっている『千両みかん』という古典落語を

材料にお話しを進めたいと思います。

 

それでは、はじまり、はじまり~。

 

 

なぜ、今、古典落語なのか

ITやAIが目覚しく進展した今日ですが、中小企業が抱える多くの経営上の問題は、その発生

理由も含めて、今も昔もそう大差はないように思えます。

 

であるならば、「人間の業を肯定した伝統的話芸といわれる落語を教材にし、そこから問題

解決の処方箋を創造して行くのも良いのではないか!」

と考えた顛末が本コラムとなりました。

 

しばしお付き合いの程を願っておきます。

 

 

1.「千両みかん」あらすじ

千両というと今のお金にすると、ウン千万円の大金。みかん一つにとんでもない値段がつい

てしまうお噺。

日本橋の大店の若旦那が、病にかかってしまいます。医者が言うには、なにか思い煩ってい

のだろうとのこと。

 

ところが両親がわけを尋ねても、若旦那は恥ずかしがって言おうとしません。

 

そこで、昔からの番頭が、聞き出したところ、若旦那は、みかんが食べたいとのこと。

 

みかんに恋煩いというのも、かわった病です。

 

ともあれ、番頭は、若旦那を元気づけようとみかんを買い求めます。

 

ところが、季節は真夏。今とは違い、みかんは冬のものと相場が決まっております。

 

あっちこっちの果物屋に掛け合いますが、夏にみかんなんかありっこありません。

 

途方に暮れていた番頭を見かねた魚屋が、神田の多町に万葱というみかん問屋があって、

そこになら1つぐらいみかんがあるんじゃないかと教えてくれます。

 

喜びで駆けつけたところ、確かにみかんがあるにはあったのですが、値段を聞いてびっ

くり。

1個千両と言われてしまいます。

 

問屋の主人が言うには、「私どもこの江戸で少しは名の知れた果物問屋。

いつお客様が『みかんを』とおっしゃっておいででも、暖簾(のれん)の手前『無い』

と申すわけには参りません。

 

そこで蔵一つを無駄にし、蔵一杯のみかんを無駄にして、こうしてみかんを貯えています。

 

毎年やっていて相当に元がかかっております。」

 

可哀想に、番頭は腰を抜かしてしまいました。

 

店に戻って旦那に相談したところ、千両で息子の命が助かるのなら安いものだと言われて、

ぽんと千両を出します

 

これでまた、番頭は腰を抜かします。

 

ともあれ、千両のみかんを買って帰って若旦那に差し出したところ、若旦那はおいしそうに

みかんを食べ、見る間に元気を取り戻します。

 

10房あるうち、7つまでを食べ終えた若旦那は、残り3つを差し出し、一つは父親、一つは母

親、残り一つは番頭にあげると言います。

 

3房のみかんを持った番頭は考え込みました。

 

「子供の頃から汗水たらして20年奉公しつづけ、来年暖簾分けする時、持たせてくれる祝

い金がせいぜい50両というところ。

 

みかん10房

 

ということは1房100両。自分は今300両もの大金を手にしている!」

 

思い悩んだ番頭は、みかんを3房抱えて、そのまま行方をくらませてしまいました。

 

 

2.この噺の聴きどころ

この若旦那のためなら一生、身を粉にして働こう!というサゲかと思えば、さにあらず…。

 

3房をもって逃げ出すあたりに落語ならではの「人間の業」がうかがえるリアルさに思わず

ニヤリとしてしまいます。

 

この噺、発祥は上方の古典落語ですが、私的は江戸落語、柳家小三治師匠がおすすめで

す。

 

 

3.ビジネスの着眼点

お金とモノの価値についての本質を上手に、かつ滑稽に描いているのは落語ならですよね。

 

まず、モノの値段というのは相対的で需給関係で決まるということ。

この噺のみかんのように、稀少性が高まればモノの値段は上がります。

 

「みかん」という物体そのものの価値は常に変わっていくという点で、まさに経済です。

 

また、千両の値段をつけた問屋主人の心のアヤと、金を持ち慣れない庶民の嘆きで

「番頭が行方をくらました」

というサゲから、2つの経済学用語が浮かび上がります。

 

それは次の2つです。

 

①使用価値

あるモノが「使う人にとって」どのくらい価値があるのか。

例:若旦那とそのお父親には、みかんは千両の価値があった

 

 

②交換価値

市場でほかの商品と交換できる客観的な価値

みかんには千両の交換価値はない。

(3房300両の交換価値はない)。

つまり、使用価値と交換価値はイコールではない。

 

 

 

 

この経営コラムタイトルは、昨年12月、ちょうどコタツでみかん食べながら「中小企業経

営者の皆様への価値あるものとは?」と考えていて、「おーっ!、まさに『千両みかん』で

はないか」と閃いてしまいました。

 

そのココロは、万人受けの交換価値ではなく、本当に必要としている人にだけに使用価値の

ある、まさに「千両みかん」のような内容を目指していきたいと考えた次第です。

 

今後不定期で月に2回程度、色々なテーマで経営に役立つ情報をお届けしますので、

次回をお楽しみに。

 

 

 

二木宏造

鹿児島の経営コンサルタント 認定キャッシュフローコーチ®

経営理念を起点にビジョンの実現に向け、経営者を徹底サポートする専門家、フィロソフィパートナーとして 鹿児島・宮崎を中心にコンサルティングを展開。

また企業向けセミナーでは「脱☆ドンブリ経営!実践セミナー」や、「明快Vノート」を活用した「実践!セルフマネジメントセミナー」等で経営者、経営幹部、管理職から新入社員まで、分かりやすく実践的な社員研修に情熱を注いでいる。